5章:外部性

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深く掘り下げよう(5章関連コラム)

気候の専門家は「人間活動により地球温暖化が進んでいる」という意見で一致している
何十年も前には気候学の専門家の間でも意見が異なっている事がありました。しかし、現在では「人間活動により地球温暖化が進んでいる」という点で気候学の専門家の意見はほぼ一致しています。「科学者の間でも未だに論争になっている」という説をとなえる人がいるためか、大量の査読付き論文を調べて、懐疑的意見の論文がどの程度あるかを調べるという研究がいくつも出ています。それらによると、現在では、科学者の意見の一致は99%以上です。
科学的一致についての論文

最近の論文の一つとして次のものがあります。
Lynas, Mark, Benjamin Z. Houlton, and Simon Perry. "Greater than 99% consensus on human caused climate change in the peer-reviewed scientific literature." Environmental Research Letters 16.11 (2021): 114005.

英語版ですが、科学的一致専用のwikipediaのページも作られています(外部リンク:Scientific consensus on climate change)。こちらに、同じような論文がいくつも紹介されています。

地球温暖化に対する懐疑論

「人間活動により地球温暖化が進んでいる」のではないと異論を唱える人がいます。このような議論を懐疑論といいます。学者でこのような説を懐疑論を唱える人もいます。しかし、日本の懐疑論者は、気候学の専門家ではない人ばかりの印象があります。(懐疑論に対する反論に興味がある人は、次のYoutube動画が分かりやすいのでみて下さい。「外部リンク:地球温暖化について科学的データでお話しします」)

なお、地球温暖化の人為起源説には異論を唱えるのではなく、現在の主流の論調に異論を唱える人たちもいます。異論を唱える所が似ているので一見すると一緒にみえてしまいますが、懐疑論者ではないので明確に区別する必要があります。

地球温暖化と気候変動

「地球温暖化」という言葉と「気候変動」という言葉があります。どちらも、人間活動による気候の影響を考える点では同じです。しかし、「地球温暖化」が文字通り温暖化のみを意味するのに対して、「気候変動」は温暖化以外の変化も意味するため気候変動の方がより広い意味を持っています。たとえば、大気中のCO2濃度が高くなることによる海の酸性化が問題となっていますが、この問題は、気候変動の問題ですが、温暖化には直接関係がないので地球温暖化の問題とはいえません。

そのため、専門家は通常「気候変動」という言葉の方を使います。「地球温暖化」はやや古いよび方なのです。「地球温暖化」というキーワードで検索すると上位に懐疑論が出てきます。専門家は気候変動という言葉を使い、懐疑論者は古い言い方を使うのが一つの原因と考えられます。この章では、あえて「地球温暖化」という言葉を使っています。これは、「地球温暖化」というキーワードで検索した時に、懐疑論以外のものが出てくる量を増やしたいと考えたからです。

食事による温暖化
CO2など温暖化の原因となる気体を温室効果ガスといいますが本文にあるように他の動物と同じことをしている時は、温室効果ガスの排出をあまり考える必要はありません。しかし、人間は、食べ物を作る時に他の動物とは異なる方法を使っており温室効果ガスを作り出しています。農作物を育てる時に、化石燃料を使う農業機械を使う事が一般的です。また、化学肥料の使用により亜酸化窒素とよばれる温室効果ガスが発生するといわれています。畜産業からも温室効果ガスが排出されています。えさの栽培や輸送、糞尿処理などによる排出があります。また、牛などはCO2より温室効果が高いメタンを生成してしまうといわれています。
温暖化対策に関する技術

石油・石炭などに依存しないエネルギーを再生可能エネルギーといいます。再生可能エネルギーは近年急速に進化しています。海外の例ですが、気象条件などがよい地域で(補助金などなしの)完全な採算ベースで太陽光発電が行われています。これからも技術革新がみこまれてより再生可能エネルギーの発電コストが下がることが予想されています。

排出するCO2を完全にゼロにすることは、ほとんど不可能です。そこで考えられているのが、排出されたCO2を地下等に貯留するCCSという技術です。気体を地下に貯めるなんて不可能に思ってしまうかもしれません。しかし、天然ガスが地下に長期間滞在し続けている事を思い出せば不可能ではない事が分かります。もちろん、ハードルはあるので、これだけで解決する夢の技術ではなく排出削減の努力も必要です。

地球温暖化対策のための税
現在も日本では、「地球温暖化対策のための税」が課されています。これは一種の炭素税といっていいでしょう。しかし、欧州諸国と比較すると桁違いに税率が低いと批判する人がいます。