センセ、どうしたんですか? 今日は。
ちょっと風邪をひいてしまってね。太郎くん達にうつすと悪いから、今日は、パソコンを通して話をするよ。
あらっ、大変。センセ、お大事に。今日は、お休みにしましょ。
いやいや、大丈夫、大丈夫。そんなに悪くないから。
無理しないで、センセ。それでは、僕ら、帰ります。
待て待て! 今日、休みにしたら、別の日に補講をすることになるよ。
ほっ、補講! それなら、センセ、ちゃちゃと話を始めてよ。
僕からも、お願いします。
もう。急に態度が変わるんだから。それじゃ、病気つながりで、新型コロナウィルスが流行っていた頃、休業要請というのをしていたよね。あれ、どうしてか分かる。
えっ。コロナにかからないようにするためじゃない。
でも、客は、皆、そのリスクを承知で来ているわけでしょう。了解済みじゃない。
ダメよ。来ているお客さんは自業自得だから感染してもしょうがないけど、その人がまた別の人にうつしてしまうかもしれないでしょう。
その通りだね。店員や来た客は、了承済みで、感染してもいいやと思っているかもしれないけど、それによって、感染が拡大して、他の人達が感染してしまうというのが問題なんだ。
緊急事態宣言ってあったなぁ。あの頃は、大変だったなぁ。
何言ってるの。太郎くんは、家でゲームばかりしてただけじゃない。
コホン。えっと。話を元に、戻すよ。店員や客というお金で取引をしている人の行動が、その取引に関係ない人に影響が出る。関係ない人が感染する可能性があるのが問題なんだ。このように、他の人への迷惑を考える必要がある。経済学の用語では、こういうのを「外部性」という。
「がいぶせい?」なんだか、けったいな名前だなぁ。
うん、ちょっと、分かりにくい言葉だよね。とにかく、こういう時は、普通にお金の力に任せていてはダメなんだよ。
あれっ? 1章で、「お金は人類最高の発明品の一つ」だとか、「お金のやりとりが増えて、経済が活性化するのは、いいことだ」とか言ってませんでしたっけ。
原則的にはお金のやりとりが増える事はいい事だ。でも例外があって、外部性がある場合がその例外の一つだよ。お金のやり取りをする当事者はよくても、他の人に迷惑がかかるなら問題でしょう。
なら、どうしたらいいの?
外部性があるときは完全に市場にまかせるわけにいかないから政府が何らかの形でしゃばらないといけない。
でしゃばるってどういうことよ!
いろいろあるけど、ここでは2種類説明するよ。一つ目は、迷惑をかける行為をするとお金をとる方法だ。経済学で、ピグー税と言われる方法だ。
う~ん。なんか、よくわからないな。
そうだね。具体例で説明しよう。コロナ渦では、飲食店での会食で感染が広がる事がある。飲食店の営業が、その場にいない感染したくない他人への迷惑行為となるんだ。そこで、迷惑行為に課税をするんだ。これがピグー税だ。
えっ? 飲食店が店を開いていたらお金をとるの? なんかひどい話だな。ただでさえコロナの影響で飲食店は経営が苦しそうなのに追い打ちをかけるなんて。
そうだよね。だから、ピグー税は使われなかった。ただ、もし、ピグー税が使われて店が開いていたら税金をとられる場合、店を閉めるようになるのがわかるよね。ピグー税はこのように迷惑行為を減らすのに役立つし、そこで集めた税金を迷惑行為を受けた人に渡す事もできる。
お金をとるんじゃなくてお金をあげてたわよね。開店時間を制限するなどすれば協力金という形でお金を払ってたわね。
そうそう、実際にやられたのは、2番目の方法だ。迷惑をかける行為を減らす事にお金を払う方法だ。経済学では、ピグー補助金というよ。協力金はピグー補助金の一種と考えていい。
でも、協力金は、結構不公平があったり振込が遅かったり問題があったんじゃない。
そうだね、いろいろ改善すべきだった点があるよね。理想的ではなかった。とはいえ、何もしないより、感染者数が抑えられるなど効果はあったはずだよ。このように、外部性がある状況では市場に任せていると問題が大きくなるので、何らかの形で政府がでしゃばる必要が出てくるんだ。
外部性があれば、こうやって解決するといいたいわけね。
いやいや、本題はここからだ。外部性があって、これらの方法が簡単には使えない状況があるよ、という話がしたいんだ。
センセ、今日は、なんか話が難しいです。もうおなか一杯です。
ごめんごめん。でも、とても重要な事だから聞いてくれよ。