4章:経済格差

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深く掘り下げよう(4章関連コラム)

日本への対外投資は増えているか?
日本が法人税を下げることが日本にお金を集める効果はあったのでしょうか?これは簡単には分かりません。というのも、他の国も法人税を引き下げていて周りの状況も変わっているからです。また、基本的には、日本は多くの国よりも法人税が高い状態を維持している点も注意が必要です。つまり、日本の法人税引き下げは、日本からお金が出ていくのを遅らせる効果はあったかもしれませんが、出ていくのを食い止めるのには十分ではなかった可能性があるのです。実際、日本から他の国への対外投資が増えているのが現状です。
囚人のジレンマゲーム
法人税の引き下げ競争で二つの国が悪い状態に陥るという話をしましたが、このような議論は経済学のゲーム理論でよく話されている内容です。ゲーム理論では、この状況を囚人のジレンマゲームとよびます。このような状況は、2つの国だけでなくより多くの国の間でも成り立ちます。多くの主体の間で、成り立つこのような問題を、フリーライダー問題とよんだり、社会的ジレンマ公共財供給問題とよんだりします。社会科学における重要な課題の一つです。
所得税の累進課税
所得が多い人ほど税率をあげる累進課税が現在とられています。格差を減らす方法として累進課税の最高税率をあげることも考えられます。しかし、この方法は、思ったよりも効果が高くないかもしれません。所得が極端に多い人は、会社員ではなく、会社を経営していることが多いからです。法人税率と所得税の最高税率の差が大きい時には節税の余地が出てくるのです。そこで、センセは、法人税をあげる事を候補にあげていたのです。
法人税と株価の関係

基本的に、法人税が下がると株価は上昇します。株主の利益があがるため、株の価値が上昇するからです。株価が上昇した時に経済がよくなったと判断する事がありますが、法人税の減少よって株価が上昇した時は、「経済がよくなった」と簡単に判断できません。法人税減税は、直接的に株価をかさ上げする操作といえます。身長を測る時に台の上にのれば、計測上は高い身長となりますが、本当に身長が高くなったわけではないのと同じで、法人税減税後に「経済がよくなかったか」かは、法人税減税によるかさ上げ分を超えて株価が上昇しているかを調べて判断する必要があるのです。

同様に、法人税増税によって株価が下がった時、経済状況が悪くなったと断定することはできません。法人税増税は株価を下げる操作といえるからです。もっとも、株価が下がると消費者心理が落ち込み経済が本当に悪くなる可能性もあります。ですから、もし、国と国が連携して法人税をあげることになったとしても、一気にあげるのは避けた方がよいでしょう。

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