4章:経済格差

この記事についてツイート
↑ツイートしてね♪

経済格差は減らせるのか

花子
花子

生まれの格差なんて悲しいわ。

センセ
センセ

そうだね。でも、親が経済的に豊かだったら幸せかというと、そうでもないからね。やはり、経済的豊かさよりも親の愛情が重要だ。

花子
花子

それは、よく分かるわ。うちは、うちの親はママだけで裕福じゃないけど、ママは一生懸命私のためにしてくれてる事分かっている。いつも、ケンカしてしまうけど、その気持ちが嬉しくて感謝してるわ。

センセ
センセ

そうそう。それに、親が裕福だと贅沢が身についてしまうけど、同じレベルを維持するのは困難だ。

花子
花子

でもね。うちは、大学にいくお金を工面できるか分からない。それに、行きたい学部が、通えるところになかったりするのよ。お金がないと、できることが限られるのよ。

センセ
センセ

たしかに、そういう問題はあるよね。奨学金とかいろいろあるけど十分ではない。格差をゼロにするのは無理があるけど、放っておくと格差は広がっていきそうだからなんとかしないといけないよね。

太郎
太郎

えっ。格差が広がっていくの?

センセ
センセ

うん。グローバル経済の影響は、もっと進んで海外の労働者との競争も激しくなりそうだ。それに、人工知能(AI)の進化などもあるから、普通の人たちは更に厳しい競争にさらされていく可能性がある。一方で、そういった競争よる効率化からくる恩恵は、株をいっぱい持っている人などお金持ちの人にわたっていく。

太郎
太郎

いやだー。なんとかならないの。

センセ
センセ

まず、考えられるのは、お金があるところから税金をとって、それ程豊かではない人のために使うという事かな

花子
花子

税金を増やして集めたって、お国はちゃんとした使い方しないんじゃない。

センセ
センセ

うーん、難しい問題だね。それじゃ、お金があるところから今より多めに税金をとって、消費税などを減らす事にして話を進めよう。

太郎
太郎

どうやって、お金があるところから税金をとるの?

センセ
センセ

会社が払う税金である法人税をあげることを考えてみよう。法人税なら、花子さんの家から税金とるわけじゃないからいいでしょう。

花子
花子

だめよ。会社から税金をとると、会社がその分、給料を減らすでしょう。給料が減るような事になるのは反対だわ。

センセ
センセ

なかなか、鋭い所をついてくるね。でも、会社があげた利益に税金をかければ大丈夫だよ。 会社で働いている人の給料は、利益とは別分類だ。利益は株主に払うお金として使われたりする。大雑把にいうと、利益にかける税金は、そこで働いている人ではなく、株主に対する税金だよ。

花子
花子

株をいっぱい持っている人でなければ大丈夫という事ね。なるほど、なら悪くないわ。政府は、実際、法人税をあげているのかしら。

センセ
センセ

ちょっと調べてみよう!あったぞ、このグラフだ。

太郎
太郎

あれっ! 下がっていってる。

花子
花子

何よそれ、消費税あげて、私たちからとる税金は上げているのに、法人税は下げちゃうって、どういうこと!

センセ
センセ

怒る気持ちはよく分かるよ。

花子
花子

お金持ちからとる税金を減らして、普通の人からとる消費税をあげるってヒドいじゃない。

センセ
センセ

ただね。これは、やむえない事情もあるんだ。

太郎
太郎

「やむえない事情」って何?

センセ
センセ

法人税が高いと損する事があるんだ。法人税が低い国にお金が移動してしまう事があるからだ。

太郎
太郎

どういう事??

センセ
センセ

前回、株式投資の話をしたよね。大まかにいうと会社が利益を出したら、その利益に対して法人税がかかって、投資家は、その残りの一部を配当などとして受け取る形になる。

センセ
センセ

つまり、法人税が低い方が、投資家にとっては儲かるって仕組みになっているんだ。

花子
花子

投資家って金持ちじゃない。法人税を下げるって、金持ちを優遇しているだけじゃない!

センセ
センセ

まあ、そういう側面はあるのだけど考えて欲しい。経済環境がとても似ている二つの国があって片方の国の法人税がもう一つの国より高かったらどちらの国の企業に投資をする?

太郎
太郎

よりもうかる方がいいから、税金が低い方がいいですよね。

センセ
センセ

そうだね。このようにして法人税が低い国の方がお金が集まりやすい。お金が集まると工場ができたりして雇用が生まれたりする。だから、得なんだ。

花子
花子

何か変よ。なんで金持ち優遇したら得するって事になってるの。片方の国が法人税を下げると、もう片方も下げて結局差がなくて同じになるんじゃない!

センセ
センセ

おぉ。花子さん、かしこい!すごい!花子さんが言うように、一つの国の行動だけ考えてはだめだ。

正確に考えるために下の表をみて。経済的環境が似ている二つの国があって法人税を選択する。法人税がどちらも高いと比較的格差が小さいので「良い状態」と表現するよ。ここで、法人税を片方の国だけ下げると、法人税が低い方にお金が集まるので、法人税が低い方は「とても良い状態」、法人税が高い方は、お金が逃げて「とても悪い状態」だよ。

太郎
太郎

ちょっとむずかしいなぁ。

センセ
センセ

ちゃんと理解しようとすると難しいよね。とにかく、この時、「法人税 低い」の方が得なんだ。だから普通は、どちらも「低い」を選択する。

花子
花子

えっと。どちらも「低い」を選択すると~。あっ。「悪い状態」になる。

センセ
センセ

そうそう。どちらも、「高い」を選択すると、どちらの国にとっても「良い状態」になるのに、実現すると予想されるのは、どちらにとっても「悪い状態」だ。

太郎
太郎

なんか不思議だな。どちらの国も得な方を選んだのに悪くなるなんて。

センセ
センセ

自国にとって得な選択をする事が相手には損になるからだよ。互いに、自分に得になることをしようとして、お互い相手に被害を与えてしまう。結局、お互いに悪い状態になってしまうんだ。

太郎
太郎

う~ん。なんかお坊さんの講話のような話だな。

センセ
センセ

法人税だけじゃないよ。規制がゆるく、非正規雇用や長時間労働とかで、労働者をこき使える国の方が、投資を集めやすい場合がある。そのため、グローバル化に伴う競争で、普通の人の労働環境は悪くなることが考えられる。このような事は底辺への競争とよばれているよ。

花子
花子

なにそれ、バカじゃない。協力したらいいじゃない!そうしたら、どちらも「良い状態」になれるんでしょう。

センセ
センセ

そうだね。バカみたいだよね。少しでも得しようとして、国と国が協力しないとそういったバカげた事がおきる。先ほどの例のように二つの国なら協力は比較的簡単だけど、実際は多くの国が絡んだ問題だから協力できずに、悪い状態になってしまうというバカげた事が起きるんだよ。こうして法人税等は低くなり、国際競争にさらされにくい消費税だけが上がっていくわけだ。

太郎
太郎

悲しい話だね。

センセ
センセ

本当に悲しい話だね。悪者がいなくても、悪い状態になってしまう事があるという事をよく覚えておいて。少しでも得しようとか、他の国を敵視したりする私たちの狭い心が本当の敵の場合もあるんだ。

花子
花子

でも、悪者がいる場合もあるんじゃなくて。私、大きな企業でもうかっているのに税金をほとんど払ってないって話を聞いたことがあるわ。

センセ
センセ

花子さんよく知っているね。花子さんが言ったのは租税回避という問題だ。先ほどの法人税の引き下げ競争より、もっと深刻な問題だね。グローバルな大企業がルールの網の目をかいくぐるような方法で、ほとんど税金を払わないという場合もあるんだ。グレーな事をして自分だけ得するなんてズルだよね。

花子
花子

本当に、大人たちは何やってるの!? 問題に気付いているんなら、さっさと解決しなさいよ!

センセ
センセ

租税回避も国同士が協力しないと解決できない問題だから簡単ではない。でも、実は、結構、対策は進んでいるんだよ。更なる対策の話も進んでいるから租税回避の方は、だいぶ解決されると思うよ。法人税の引き下げ競争の防止にもつながる「最低税率」という話も合意ができて解決の兆しが出ているよ。

太郎
太郎

へぇ。すごい解決するんだ。

センセ
センセ

解決する方向に動いているけど、まだ、経済格差を減らす程ではない。多くの人が経済格差の緩和につながっていく話だとして、税に関する国々の協力に注目してほしい。政治家たちは、注目される事ほど一生懸命に仕事する。

花子
花子

宝くじのバカ騒ぎから、えらいところまで話が進んだわね。

センセ
センセ

そうだね。ちょっと話が長くてわかりにくかったね。まとめよう。

花子
花子

運による格差なんてひどいわ

センセ
センセ

うん、だから格差を減らす努力をしたいところだ。本来、政府が格差を減らすべきなんだが、グローバル経済の圧力で手足がしばられているんだ。たとえば、法人税を上げようとしたら、かえって悪い状態になったりする。お金の力が強くなり過ぎている。

太郎
太郎

グローバル経済を制限したらいいんじゃない。

センセ
センセ

そうだね。でも、1国だけで制限をかけようとしたら、とんでもないしっぺ返しに会う。グローバル経済に1国だけ取り残されてひどい目に会う。

花子
花子

どうしたらいいというの

センセ
センセ

だから、「国と国の協力」が必要だ

グローバル経済が敵だと思う人の中には、海外の国が敵だと思う人がいる。勘違いだ。国と国が対立したらグローバル経済のおもうツボだ。そうではなく、国と国が協力してお金の力を制御していかなければいけないんだ。

花子
花子

急に壮大な話になったわね。そんな事、私たちに言ったって仕方ないわよ。

センセ
センセ

若い君らだから話をしてるんだ。これから将来の時代を生きていく君たちだからこそ知っておく必要があるんだ。これらの問題に立ち向かうために、太郎くんや花子さんが、「今できる事」を最終章(7章)で提案するから期待してね。