2章価格の正体

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価値と価格

センセ
センセ

今日は、石ころを持ってきたよ。ちょっと小さいんだけど、きれいなんだ。

花子
花子

えっ。えー。これ、ダイヤモンド! 初めて本物みたわ。

太郎
太郎

えぇ! センセ。学校に何もって来てんですか。

センセ
センセ

すごい反応だな。うれしいな。
次のは、もっとすごいぞ。もっと大きいし、形もいいんだ。

(コロっと丸い球が転がる)
花子
花子

センセ。それは、ビー玉。

センセ
センセ

花子さんは、「ビー玉」ってよぶのか。なかなかいいだろう。大きいし。完全に真ん丸だし、転がして遊んだり、いろいろ使えそうだろ。

花子
花子

センセ。ビー玉なんか関心ないわ。それよりダイヤよ。

センセ
センセ

えっ。この石ころがいいの? これで、どうやって遊ぶの?

花子
花子

なんで、遊びに使う前提なのよ!ダイヤの輝きは素晴らしいでしょ。ファッションとしてダイヤを身に着けるのよ。いいこと。ビー玉よりダイヤの方が何万倍も高いんだから。

センセ
センセ

ええぇ。ちょっと光ってるだけでそんなに価値が高くなるはずないよ。
絶対おかしい!

花子
花子

そのとおりよ。センセはおかしい。

センセ
センセ

同意してくれてありがとう。そう、センセはおかしい。って違う違う。
そうではなくて、こんな石ころに、こんなに素敵なビー玉の何万倍もの価値があったらおかしいでしょ。

花子
花子

でも、ビー玉は1個10円ぐらいだし、ダイヤは安いのでも10万円ぐらいするわよ。1万倍以上高いわ。

センセ
センセ

う~ん……。おぉ、そうだ。分かったぞ。花子さんは、「価格」の話をしていて、俺は、「価値」の話をしてるんだ。別の事をいってたんだ。

花子
花子

なに言ってるの? ダイヤモンドを売れば、ビー玉を何万個も買えるのよ。
価格が価値でしょ。

センセ
センセ

そういう売り買いの事を一度忘れて考えてみようよ。 価格は横において、「自分にとっての価値」を考えてみよう。

太郎
太郎

そういわれても、よくわからないです。

センセ
センセ

そうだね。お金がある現在の状況だと、分からなくなるので、お金がない世界をイメージしてみて。お金がないので、売る事はできない。ファッションとして身に着けても、誰もそれが、高いとは知らない。そう想像してみて。

センセ
センセ

このお金のない世界で、この石とビー玉のどちらかもらえるなら、どっちが欲しい? 太郎くんどうだい。

太郎
太郎

う~ん。そうなると、確かにビー玉の方が使い道があるかな。

花子
花子

男どもはダメね。当然、ダイヤ。ダイヤはみてるだけで幸せになれるのよ。
ハイ、ちょうだい。

センセ
センセ

えっ。どちらか欲しいか聞いたけど、あげるとは言ってないよ。

花子
花子

つべこべ言わないの。

センセ
センセ

..... ..... .。
ハイ。太郎くんビー玉、花子さん石ころね。

花子
花子

えぇぇ。冗談だったのに、本当にくれるのやった!

センセ
センセ

うぅぅぅ。

花子
花子

センセ、大丈夫泣いてない?

センセ
センセ

気に入ってたんだ大切にしてくれよ、そのビー玉。

花子
花子

そっちかい!

センセ
センセ

その石が高いものと思えば、見ているだけで幸せかもしれない。でもね、高いと知らないでも、本当に、その石が、花子さんを幸せにするのかな。

花子
花子

何言っているの。私は、今、とても幸せよ。

センセ
センセ

でも、花子さんは、本物のダイヤと偽物の区別がつかないじゃないか。

花子
花子

にっ、偽物?………。おのれ、センセ。だましたな!

センセ
センセ

だましてないよ。ダイヤなんて一言もいってないし、……

花子
花子

いいえ。「石ころ」って言いました。ガラス細工のダイヤは石じゃありません。

センセ
センセ

だから、話を聞けって…

花子
花子

だます人の話なんか聞けません! ううぅ。この偽ダイヤめ!

センセ
センセ

もう。投げるんだったら返してもらうよ。あらっ。花子さん固まってる。おーい。花子さん。

花子
花子

..... .。

センセ
センセ

よほどショックだったんだね。しょうがない。太郎くん、二人で話を進めよう。