株式投資? 私たちには関係なさそうな話ね。
そうでもないよ。太郎くんがさっきしてくれた事がまさに投資だ。
またまた、訳が分からない事をいう。
さっき、天井の電灯にダイヤを入れた袋がひっかかって一人ではとれなくなってたんだ。その時、太郎くんが助けてくれたよね。会社も自分だけでは手の届かないところにお金を稼げるプロジェクトがあって、助けてもらいたい時がある。
「助け」って?
ここでいう「助け」は、お金を出してもらう事だよ。お金があれば新しく人を雇ったりいろいろできるよね。
「助けて~」といったらお金もらえるの? そんな事あるの。
もちろん、見返りがなければ無理だよね。太郎くんも、成功した時に、チョコレートをもらえるから助けてくれたんだよね。会社の場合、お金と交換に株(かぶ)をくれるんだ。
えっ。かぶ? そんなの渡すだけで、助けてくれるの。
かぶといっても、食べ物のかぶじゃないよ。株で、会社に対する権利を得られるんだ。
「権利」なんていわれても、株を持つメリットが分からないわ。
一番わかりやすいのが、「配当」というお金をもらえる権利だよ。 配当は、年に1回か2回くれるんだよ。
借金の返済を金利をつけて少しずつ返してくれるって事かな。
似てるけど、お金を貸すのと投資は違うよ。貸す場合は、金利が固定されているし、基本的に、貸した額以上に戻ってくる。でも、株の場合は、配当の金額は決まってなくて、出したお金が戻ってくるかどうか分からないんだ。
えぇ。そんなのひどいよ。
太郎くんが手伝ってくれた時も、「成功したら」という条件で、チョコをあげると約束しただろう。袋がとれなくてもチョコをあげないといけないんだったら、センセも助けを頼みたくないな。
でも、出したお金が戻ってこないかもしれないんだったらリスクがあるよね。
そう。だから、普通は、投資をする前にその会社について調べて将来性について考える。太郎くんも、先ほど、肩車をした時の高さを考えて、指し棒も必要だとか、実際に行動に移す前に考えただろう。
うん。僕は賢かったね。でも、配当をもらえるのは年に1回とか2回なんでしょう。元を取るのにすごい時間かかるよね。待ってられないよ。
待ってられない時どうすればいいかな。太郎くんは、チョコレートを授業の後にしかもらえないといわれてどうした?
待ってられないから、もらえるチョコレートの半分を花子さんにあげる事にしてクッキーをもらって食べてただろう。
ゲッ、バレてた!
センセは、なんでもお見通しさ。太郎くんはチョコをもらうまで待てないから、その権利を花子さんに渡しクッキーをもらった事になる。
株の場合も同じだ。配当をもらうのが待てない時、他人に株を売ってお金に換えることができる。これが、株の売買だ。
あれっ。さっき、会社を助けるためにお金を出すって話してたわよね。ここでいう株の売買で株を買うと、会社にはお金がいかないじゃない?
するどいね。会社から直接、株を買う。つまり、会社に直接お金を渡して助ける機会は、実は、めったにない。「IPO」や「増資」とか、ちょっと難しい言葉が出てくる時だけだ。
先ほど、太郎くんと花子さんはセンセと関係なく取引をしていたよね。同じように、会社とは関係なく株を持っている人と、株を欲しい人の間で株の売買が行われているんだよ。
ふーん。会社を助けるのと違うんだね。それなら、社会的には、あまり役にたってないじゃない?
そうでもないよ。株の売買があるおかげで、いつでも好きな時に株をお金に換えられる。安心して、株を買うことができる。つまり、会社を助けた人を助けているわけで間接的に会社を助けている。
それに、株の売買で、日々、株価が値動きすることは、会社の活動を採点するという重要な役目があるんだ。
会社の活動の採点?
会社の経営がうまくいかなくて、赤字が続きそうになったりすると、株価が下がっていく。これは、経営者たちに赤点をつけている事になるんだ。
太郎くんも時々、テストを受けるよね。
うぅ。テストなんて言葉きくだけでイヤだよ。
でも、テストがあるからこそ勉強を頑張ろうという気になるよね。会社の経営も同じで、採点されるという緊張感がある方がよい場合が多いよ。株式投資をする多くの人の知恵をあつめて、会社の将来性を採点してもらい、経営者たちに自分の仕事を見直す機会を与えるメリットがあるんだ。
ちょっと話が難しくなってきてますよ。よく分からないけど、母さんが株への投資はギャンブルだといってたんだけど違うんですか。
ギャンブルではないよ。まず、さきほど話をしたように、基本的には、世の中の役にたつ点が違う。それから、平均的には、株の投資はもうかる点も違う。
えっ。もうかるの?
あくまでも平均的ということで、人によって違うけどね。
だまされないわよ。昔、株価が暴落して大損した人がいっぱいでたって聞いたわよ。
花子さん、よく知っているね。実際にデータをみてみよう。下のグラフが日経平均の推移だ。 日経平均は、日本の代表的な企業の株価の平均的な値動きを表しているよ。
なんかすごく上がったり下がったりしてますね。特に左端のあたりの下がり方が大きいです。
そうだね。図の矢印の付近で「サブプライム・ショック」「リーマン・ショック」というのがあって、株価が暴落したんだ。2007年の6月に1万8千円ぐらいだったのが、1年半後の2009年1月には8千円ぐらいになったんだよ。
1万8千円が8千円に!という事はええーっと。
半分以下ってことじゃない?!
そうそう。正解!
ほら、株式投資なんてもうからないじゃない。
もしも、180万円投資していたとしたら、その価値が半分以下の80万円になるわ。100万円の損って事でしょう。ダメじゃない。
そうだね。2007年6月に株を買った人は、すごいショックだっただろうね。でもね。その人がそのまま株を持ち続けていたら今どうなっているのだろう。
その先?えっと、グラフの右の方だね。なんか上がっていっているね。
そう!そうなんだ。2022年3月末には、2万8千円ぐらいになっている。2007年6月という最悪のタイミングで株を買った人も、その株を持ち続けていれば、今、(平均的には)すごく儲かっているという事だよ。
ええっと。また、180万円投資したとしたら…、それが280万円。えっ。100万円も得ってこと!
そうそう。しかも、それは株価だけの話。前に話をしたように配当金ももらえる。配当金だけでも、銀行に預けた時の利子より高い事が多いんだ。
このように、株式投資は短期的には損する事はあるけど、長い目でみるともうかる事が多いんだ。